愛宕の森と緑を守る会
夏〜初秋の散策
仙人草。つる性。果実に白い毛があるので、これを仙人のヒゲに見立てて、この名前がついた。4枚の白い花びらは実は花ではなく萼片。毒草なので要注意。民間療法では扁桃腺炎に用いることがある。クレマチスと同類。
大犬蓼。タデ科イヌタデ属の一年草。6〜11月に淡紅色から白色の花を付け、7cmほどのの長い花序が垂れ下がる。イヌタデ(アカマンマ)に似るが、葉の根元の鞘(托葉鞘)に毛が無いことでも区別できる。
葛。マメ科クズ属。ツル性多年草で日本に広く分布。繁殖力旺盛で、低木を広く覆い尽くす。海外では樹木を枯らす侵略的外来種ワースト100とされ問題に。日本では枯らされることはないが、木が真っ直ぐに伸びることを妨げ、木材の質が下がるとして、林業者には問題に。一方、森林の縁に生えるクズは防風の役割を果たし、森林を消滅から守る働きをしているという側面もある。
クズに覆われた樹木は、太陽の光を奪われて、厳しい生育環境に晒されてしまう。
根から良質のデンプンである葛粉を取り、漢方薬の葛根湯や葛切り、クズ湯をはじめ日本料理に広く使われる。若芽の天ぷらも美味しい。
継子の尻拭い。タデ科イヌタデ属。Persicaria senticosa。別名トゲソバ。
かわいい花ではあるが、茎や葉が棘だらけで、これで憎い継子の尻を拭くと・・・。韓国では「嫁の尻拭き草」。
枸杞。ナス科の落葉低木。花期は夏〜初秋。晩秋〜初冬に赤い実がなり、生薬やクコ酒に用いられる。
鵯上戸。ナス科ナス属のつる性多年草。全体が柔らかい毛に覆われている。草全体が解熱、解毒、利尿に用いられるが、ソラニンを含んでおり、食することはできない。
晩秋に1cm程の赤い実を付ける。マルバノホロシ、ハダカホウズキが良く似ており、同じような赤い実を付けるが花柄(実の茎)の形の違いで区別できる。
花を裏返すと白。紅白が揃って目出度いので、ミズヒキの名がついた。
黄烏瓜。スミレ目ウリ科カラスウリ属。雌雄異株のツル性多年草。花期は7〜9月。カラスウリに似るが、昼間でも花が咲いていること、ヒゲのある花弁の先端が広がっていること、熟した実が黄色くて丸みを帯びていること、種子は溝のない楕円形であることなどの違いがある。塊根は生薬として解熱、消腫などに用いられるが、抗エイズ薬になるとの研究もある。
カラスウリに似ているが、昼間でも花が咲いているのはキカラスウリ。
雪の下。ユキノシタ科ユキノシタ属。別名、鴨足草(俳句で夏の季語)。常緑の多年草。花期は5~7月。湿った半日陰に自生。ランナーを伸ばして繁殖する。
「虎耳草」という民間薬に。葉をあぶり、火傷や腫れ物の消炎に。葉の絞り汁は中耳炎、漆かぶれ、虫刺され、小児の引きつけなどに。乾燥させた葉・茎を煎じて解熱・解毒に。 食用としては、天ぷら、茹でて胡麻あえ、辛子あえなどに。
蓮。ハス科ハス属。別名芙蓉、不語仙(フゴセン)、池見草(イケミグサ)など。古名は「はちす」。花托がハチの巣の形に似ているため。インドとその周辺域が原産地。7~8月に開花。地下茎はレンコン(蓮根)の名で食用に。実、若い花托も生で食べられる。茎も炒め物、砂糖漬け等、食材として用いられる他、糸にもなり、布に。蓮茶や蓮芯茶はベトナムを中心に嗜好されている。
ハスはスイレン(睡蓮)に似るが、スイレンはスイレン科で別種。スイレンは葉の茎が水面から立つことはない。
牛繁縷。ナデシコ科ハコベ属の越年草(多年草の場合も)。日本全土に分布。花期は主に4~10月だが通年にわたることも。コハコベなどの他のハコベとは異なり大型になるが、雌しべ(花柱)の本数が3本ではなく5本あることも特徴。大型であることが名前の由来。
立方喰 。カタバミ科カタバミ属の多年草。北アメリカ原産の帰化植物。カタバミは茎が地を這うが、花を付ける茎が立ち上がる。花期は6~9月。よく似たものに、茎が太いオッタチカタバミという外来種がある。タチカタバミとは異なり、莢が下を向く。
楓野老。ヤマノイモ科ヤマノイモ属のツル性多年草。茎はヤマノイモに似て長く伸びてものに絡む。花期は7~8月。雌雄異株で、雌花は花序にまばらに付き、花托(花のつけ根の膨らみ)が目立つ。雄花は花序に多数付く。この画像は雄花。
秋に出来る種子(さく果)には3枚の半円形の翼が付く。
大根草。バラ科ダイコンソウ属。花期は7〜8月。
花弁が5枚の集合花。この後、花柱の先端がカギ状に曲がった実となり、動物にひっかかって運ばれる(ひっつき虫)。
下部の葉がダイコンの葉に似ているので、この名が付いた。
小薮煙草。キク科ヤブタバコ属の越年草。頭花の基部に線状披針形の苞葉が多数ある。
日本のヤブタバコ属(ガングビソウ属)は6種あり、類似している。サジガンクビソウにも似るが、最終的にはコヤブタバコと同定。
洋種山牛蒡。ヤマゴボウ科 ヤマゴボウ属。北米原産で明治初期に帰化した多年草。別名はアメリカヤマゴボウ。全体に有毒で中枢神経を麻痺させ、意識・呼吸障害や心臓麻痺を引き起こし、最悪死に至る。
初秋、実が熟すと黒紫色になり、果汁が服につくとなかなか落ちない。このためか、米国では Inkberry と言われている。染料になり、染め方によって紫、オレンジ、黄土色などに染まる。なお、これと似た、在来種(中国原産)のヤマゴボウも有毒だが、外見上の違いは、花序が下に垂れているか直立しているか、実が一つの丸形に見えるか8つに分かれて見えるか(8個の分果)です。いずれも前者がアメリカヤマゴボウで後者がヤマゴボウの特徴。 因みに「山牛蒡漬」等の漬物として土産物で売られているものは、これらと全く別物のキク科アザミ属のモリアザミの根。
犬蓼。タデ科イヌタデ属の一年草。別名、アカマンマ。日本全土の道端などで普通に見られる。花期は6~10月。
オオイヌタデが似るが、イヌタデには葉の根元の鞘(托葉鞘)に長い毛が出ているので区別できる。 果実は光沢のある黒色で、赤い花被に包まれている。
狐の孫。キツネノマゴ科キツネノマゴ属の一年草。高さは10~40cm。花期は8~10月で、8mmほどの小さな花が穂状に密集しているが、2~3個づつ下から順次咲いていく。本州~九州の道端に見られる。
キツネノマゴ属は熱帯を中心に300種ほどあるとされるが、日本では、沖縄にキツネノヒマゴが分布する以外に、この1種のみが分布。平安時代の薬草の書「本草和名(ほんぞうわみょう)」にも出ている。
蒴藋(あるいは曽久豆)。レンプクソウ科ニワトコ属の多年草で、高さが1~1.5mほどになる。別名、クサニワトコ(草接骨木)、ソクドウ(古名)。全草を乾燥させ、利尿、神経痛、リウマチの生薬に。生薬名は蒴藋(さくてき)だが、平安時代にソクドウの名をあて、後に、なまってソクズになったとか。
花期は7~8月で、茎の先に密生して咲く。アゲハを始め、多くの蝶が集まる。
花に蜜はなく、円形で黄色い腺体に蜜を貯める。
果実は4mmほどの球形で、秋になって熟すと色づいて朱色に。
長柄小茄子。サクラソウ科オカトラノオ属の多年草。日本各地に見られる。花期は5~6月だが、秋まで咲くケースもある。葉腋に花をつけるが、花柄の長さ(6~18mm)で、コナスビ(花柄が3~8mm)と区別されるが、両者ともコナスビに分類する考えもある。ここでは一応、茎に密生する毛の様子の違いでナガエコナスビとした。
蔓万年草。ベンケイソウ科マンネングサ属の多年草。高さは15~30cmで、繁殖力が強い。花期は5~6月。朝鮮、中国東北部原産で、古い時代に帰化したと考えられている。この属は多種にわたり、似たものが多いため同定が困難。ここでは一応、ツルマンネングサとしたが、茎の色など疑問点が残る。
姫女苑。キク科ムカシヨモギ属の一年草、あるいは二年草。別名、ヤナギバヒメギク(柳葉姫菊)。花期は6~10月。高さが150cmにもなり、道端で普通に見られる。北米原産で江戸時代末期に観賞用に導入され、その後雑草化して全国に広がる。若葉は春菊のような味で、おひたしや天ぷらに。無受粉でも種子ができ、繁殖力が強い。侵略的外来種ワースト100に挙げられ、外来生物法で要注意外来生物に指定されている。
極めて似ているのが同じく侵略的外来種のハルジオン(春紫苑)で、見た目には区別が難しいが、ハルジオンの花期はヒメジョオンより早く、4~6月。また、ハルジオンの茎は中が空洞であるのに対し、ヒメジョオンの茎の中には白い綿状のものが詰まっているので、区別できる。
屁糞葛。アカネ科ヘクソカズラ属のつる性多年草。別名、ヤイトバナ(灸花)、サオトメバナ(早乙女花)、クソカズラ(屎葛:古名)。全国で普通に見られ、夏の季語でもある。花期は7~9月。果実はつやのある球形で、緑から黄褐色に。別名の早乙女花は花を逆さにすると早乙女の笠のよう、灸花は花の中心がお灸の跡のようだからだが、何とも落差のある名前は、その臭いを嗅げば納得できる。そのような臭いだが、果実、全草とも薬用に、果実は香料を混ぜて美肌化粧料に用いられる。
日陰猪子槌。ヒユ科イノコヅチ属の多年草。単にイノコヅチともいう。別名、フシダカ、コマノヒザ。8~9月に10~20cm程度の穂状花序を出して、小さな緑色の花を多数つける。花の基部にある苞葉は尖り、実が熟した後も残って動物に付着して種子を広げる厄介者。似たものにヒナタイノコヅチがあるが、花が密生していること、茎や花軸に毛が多いことで区別。根を乾燥させて、利尿などの漢方薬(牛膝:ごしつ)として用いられる。
力芝。イネ科チカラシバ属の多年草。花期は8~10月で、長い総苞毛が特徴。高さが50~80cmで、日当たりの良い土手などに群生する。
藪麻苧。イラクサ科ヤブマオ属。普通に見られる高さ1m程度の多年草。花期は7~9月。
夏藤。マメ科フジ属(ナツフジ属)のつる性落葉木本。別名ドヨウフジ(土用藤)。これは夏あるいは土用の頃に花を咲かせるから。つるは左巻。類似のフジやヤマフジと比べてつるが細く、また、葉の裏の毛はナツフジだけがほぼ無毛。鷲尾愛宕神社入口の石鳥居の脇で見られる。
野萱草。別名ベニカンゾウ。ツルボラン科ワスレグサ属の多年草。本州~沖縄に分布し、雑木林の縁、野原のやや湿り気味の場所で見られる。花期は7~9月で、70~90cmの茎から順次オレンジの一日花が咲く。解熱、利尿に用いられる。よく似たヤブカンゾウ(ワスレグサ)は八重咲き。 熊本県・大分県では指定希少野生動植物に指定されている。