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愛宕山の危機

 愛宕山は福岡市内にあって、「福岡市のグリーンアイランド」とも言える、福岡市民にとっての貴重な緑の財産です。私たちは愛宕山の森と緑を守るために、40年近く手がつけられていない特別緑地保全地区の整備・拡大を望んでいますが、現実には逆に、保全地区に接した土地での開発が次々と進められようとしているのです。かつて、大型マンション建設にあたって移設保存することになっていた貴重な愛宕山古墳が履行されずに消滅してしまったといったような事態がまかり通る「開発」も行なわれました(愛宕山古墳の項参照)。また、市が特別緑地保全地区と図示している範囲内の土地で展望台の建設工事が行われ、その視界を確保するために樹木を「整理」するといった事態も生じています。このため、すでにかなりの樹木が伐採され、緑が消滅してしまいました。このような事態にたいし、今、何らかの手を打たなければ、愛宕山の貴重な森と緑は今まで以上に縮小し続け、虫食い状態になってしまいます。

特別緑地保全地区内でも自由に伐採•工事できる?(2015年10月)

 愛宕山の北側(博多湾側)、マリナ通りから愛宕山に上る道にヘアピンカーブがあります。このヘアピンカーブの頭にあたる場所に、樹木に囲まれて鐘道神社(大山祇神社)の祠と、姪浜炭鉱創始者、葉室豊吉の顕彰碑がありました。ところがある日、ここの樹木の一部が切り払われ、鐘道神社の祠を取り壊す工事が始まりました。そしてその場所に展望台をつくるという工事でした。しかしここは左下の図で判るように、特別緑地保全地区として指定されている貴重な場所です。これはどういうことだと福岡市の担当者(住宅都市局みどりのまち推進部)に問い合わせました。特別緑地保全地区に指定されている場所では樹木の伐採や構造物の撤去・設置工事等をおこなう場合には市長の許可が必要だからです。ところが驚いたことに、担当者の回答は「そこは保全地区の範囲外で私有地だから問題は一切無い」というものでした。ということは、工事にあたって一切の申請・協議・許可もなされていないということです。しかし左下の図面は福岡市が作成したものですし、愛宕山のあちこちに設置されている市作成の特別緑地保全地区指定の表示板でも、この場所が指定地域内であることは明瞭です。だとすると、これは明らかな違法行為になります。福岡市は一体どのような緑地保全管理を行っているのか、緑地保全に対してどのような行政を行っているのかが問われかねません。このようなことであれば、特別緑地保全地区内で、いくらでも自由に樹木伐採・緑の破壊の工事をしても構わないということになってしまいます。

宅地開発
1000平米以上でも許可なく開発できる?  (2015年9月)

 都市化にともなう無秩序な開発を規制する目的で、都市計画法第29条は一定規模を超える宅地造成等の開発をおこなう場合には知事または政令指定都市の長に開発の申請をおこなって許可を得なければならないと規定しています。その規模は政令で原則1000平米以上(三大都市圏では500平米)と決められていま す。
 ところが最近、愛宕山2丁目で1000平米を超える1100平米の宅地造成工事が無許可でおこなわれるという事態が生じました。特別緑地保全地区に近い敷地の樹木が全て伐採され、緑が消滅した後を削って4区画の宅地を造る工事でした。このような問題がある造成工事だったため、福岡市の担当窓口に相談しにいったところ、「問題は全くない」との返事。実は、開発業者は事前に市に相談し、市による「指導」の下でこの工事を実施したことが、市の対応で判明しました。その「手口」は以下のようなものでした。4区画のうちの1区画は地権者が異なるため、残りの3区画は併せて1000平米以下(832平米)であって都市計画法には抵触しないとのこと(註)。しかし実際には造成工事は「地権者の区別なく」ひとつの工事業者が一体の工事として実施していました。4区画目も含め、道路へのアプローチまで完成しています。唯一の違いは、4区画目だけ擁壁工事の一部が「未完成」になっている位です。それから、都市ガスの引き込み工事が残りの3区画だけ行われたといった所でしょうか。今のところ、販売に出されているのは3区画だけです。これは、4区画目は2年間はそのままにしておくようにという、市の「指導」があったとのことです。どうみても「アリバイ工作」としか言いようがありません。奇妙なことに、私たちが市に指摘したいくつかの問題点は、直後に工事のやり直しがわざわざ金をかけてすぐに行われたということです。私たちが開発業者に言ったわけではありません。あきらかに「こうすれば問題は生じない」という市の「指導」があったと思われます。
 問題は、このような「手口」を使えば、どんなに大規模な開発でも何らの許可も無く自由に行うことが可能であり、都市計画法の理念にそった行政指導が放棄されているかぎり、それに拍車がかかるという事態です。これが改められないかぎり、愛宕山の森と緑はずたずたになってしまうでしょう。

(註)登記記録を調べたところ、もともと1100平米あった土地を元の地権者から購入する際に分筆して832平米と266平米を別名義(会社名と社長名?)としたものです(合わせて1098平米、2平米は誤差?)。

©愛宕の森と緑を守る会

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